「多重イメージが生み出す風景」
蒼く深い闇の中から浮かび上がるように、仏像と僧侶が相対する。いや、僧侶の想念から生み出された仏像であろうか。
シュルレアリスム的な表現が目を惹く一作。デベイズマンという、現実的にはありえない配置やサイズで描く手法を駆使しており、それゆえに浮遊感のある画面が実現している。また多重イメージが生み出す夢のような風景が、作者の心象風景として我々の前に立ち現れてくるようだ。
シュールレアリスムは、フロイトの「精神分析理論」に拠っており、意識下に閉じ込められている無意識の感情を描くものとされる。
作者によれば、本作は「観ているだけでその人の深層意識が真の静寂で満たされるよう意図して描いた。」とあって、作品を前にすると没入感を得られると当時に、瞑想状態になるようだ。藍色に金が映えて美しく、作者の鋭い美的感覚が伝わってくる。
文/嶋田 華子
2023年12月30日発行
2,200円(本体2,000円+税10%)
A4ワイド/右開き/カラー/228頁
ISBN978-4-88143-168-9
巻頭特集は、画家・フェルメールです。
レンブラントと相並ぶオランダの巨匠ですが、現存作品は僅か37点という寡作画家としても知られます。作品《窓辺で手紙を読む女》では、隠れていた絵(画中画)を修復して日本でも公開されたことは記憶に新しいところです。
画家になるまでの修業時代は謎に包まれていますが、風景画から歴史画、風俗画まで、その43年の生涯を余すところなく紹介します。
また、絵画をはじめとしたあらゆるジャンルの現代作家の誌面も満載でお届けします。
Vol.84特集
現実よりも現実らしい虚構
フェルメール
フェルメールのリアリズム
フェルメールのエロティシズム
フェルメールとアジア/日本における受容
フェルメールと歴史画、 他
現代絵画―質感を再現する眩耀の美
理想的空間―寓意と現実の創出